★ 住民参加型路線バス

 鰺ケ沢町には全国でも事例のない「住民参加型」の路線バスがあります。地域の全世帯が毎月回数券を購入してバス路線の維持に努めているのですが、なぜこのような方法で路線バスを運行することになったのでしょうか?

1 地域の概況
 この方式をとっているのは深谷地区というところで、深谷、細ケ平、黒森の3つの集落から成り立っています。
 この地区は、鰺ケ沢町の中心部から約20km、既存のバス路線から一番近い集落まで約3km程入り込んだ山間部にあります。
 そのため、路線バスが開通する前は近い人で3km、一番遠い黒森集落からは8kmの距離を往復しなくてはならないため、高校生は町に下宿したり、毎日家族の送り迎えが必要でした。
 また、お年よりも思うように通院することができず、大変不便な状況でした。

2 バス乗り入れまでの経緯
 この地区は、鰺ケ沢町において路線バスがない最大の地区であることから、長年陳情を繰り返してきましたが、山間部であり、採算性がとれないということでなかなか路線化されませんでした。
 平成4年11月に再度陳情したが、バスを1日3往復させると費用が約1,400万かかり、運賃収入は1,000万程しか見込めないためバス事業者単独でのバス運行は不可能であるとの回答でした。
 その後、津軽地区28市町村で構成される「津軽地域路線バス維持協議会」においてワークショップ形式でこの問題が取り上げられることになりました。
 そして、深谷地区住民、町、協議会の間で話し合いを続けているうちに、住民のほうから「バスをはしらせるためには自分たちも赤字の一部を負担してもいい」という意見が出てきました。これは、バスというのは公共的なものであるから、電気や水道といった他の公共的なものとおなじようにバス運行のための基本料金だという考え方から出てきたものです。
 住民が運行費用の一部を負担してバスを運行させるケースは全国でも事例がなく、その是非については賛否両論であったが、事業者と行政が運行費用を負担して運行するとなると、当初は利用するが、次第に利用しなくなるケースが多いため、バス運行を長く続けていくためには「住民が自分たちで作ったバス」、「バスに乗らなければ、バスはなくなる」という当事者意識を全ての住民に持ってもらうことが必要と考えたことから、弘南バスが試算して「一世帯、毎月1,000円のバス回数券購入」という案が示されました。
 深谷地区では「自分たちのバスだからみんなで負担するのは当然」、「月1,000円でバスが来るなら安い」と快く全世帯の賛同を得ることが出来たので、当初見積もりの400万円の赤字を住民が回数券購入し、町は残りの赤字を補助(運行経費の1/4上限)することで運行のめどがつきました。
 その後も話し合いを続け、弘南バスから東北運輸局に路線開設の申請し、認可を受けたので平成5年8月7日から運行を開始しました。

3 路線維持のための活動
 運行開始にあわせて、「鰺ケ沢町深谷線バス運営協議会」を組織し、深谷地区3集落の代表、弘南バス、町の3者から委員を選出し、3ヶ月に1回程度会議を開催し、バス運行時間や運行頻度等について話し合いをしています。
 また、住民サービスの一環として、毎年春に観桜会、冬に温泉ツアーを企画したり、逆に「ブナ探勝ツアー」を開催し」弘前地区から深谷地区に呼び寄せるなど、相互の交流を図っています。
 さらに平成12年度からは深谷地区にあるブナ原生林体験ゾーン「ミニ白神」まで路線を延長し観光客による輸送人員の増大を図っています。